U-FORUM MUSEUM
宇フォーラム美術館
スケジュール
展覧会情報
概要
平松 輝子
二紀 和太留
坂田 一男
ご連絡先・交通案内
■ 宇フォーラム・KV21 第54回展「丸田恭子展」「平松輝子展」
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場所:
期日:
宇フォーラム・KV21 国立市東4-21-10
2013/06/01(土)〜06/23(日)
木・金・土・日のみ開館 PM1:00〜5:00
作品紹介
会場

丸田恭子

平松輝子

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■丸田恭子  −地球の外でYESと言う−

展覧会によせて   丸田恭子

「すべての根源にある肯定性それを全肯定、全受容と呼ぶ事にした。そこからすべては出発するのであって YESもNOもその後にくるもの。うわべの批判は簡単にできるがまずはすべてを受け入れることによってのみ進むことができる。どんなに大きな謎や矛盾があっても、不安、怒り、悲しみがあったとしても全肯定という制作の根底に横たわる覚悟のようなものかもしれない。

前回の展覧会のタイトルは「地球の真中でYESと言う」、今回のタイトルは「地球の外側でYESと言う」一歩俯瞰した地点から見つめてみる。」


丸田恭子展   平松朝彦

今回、宇フォーラム美術館の企画展のテーマは「宇宙の外側からYESと言う」「全肯定」である。その意味は別途、作者の説明があるが私なりに解釈すると「時空を超える存在」を認め、それを表現するということではないか。作者の住む長野県は3000メートル級の山があるまさに大自然に恵まれた地である。ある時は雲ひとつない青い空が宇宙を思い起こさせる一方、厚い雲から太陽の光が地上に降り注ぐ荘厳な光景も稀ではあるまい。平地の都会に住む人間と発想が異なって当然だろう。

作品の展示であるが奥の展示室には高さ約2.3メートルの浸透シリーズ、Untitled N−1、Untitled N−2や、幅約4mの3枚組P−1などの大作が並んだ。一方、手前の展示室には新たな素時間シリーズなどが並ぶ。「素時間」というが、作者によると「時間というものはない」のであり、同じことは最新の物理学者も唱えているらしい。意外なことにあの夏目漱石も同様の発言(「文芸の哲学的基礎」講談社学術文庫)をしていることを最近知った。美術について深い造詣のある夏目漱石はこの本においても美術について様々の注目すべき事を述べている。彼によると画家には知の画家と情の画家の二つのタイプがあるという。知の画家とは「物の関係を明らかにし、絵の中に真を描こう」とする。一方、情の画家は「自己の中にあらわれてくる様々の感情を色や形で絵にする」という。丸田さんは明らかに前者の知の画家だ。それはかつて坂田一男も知の画家といわれたことを思い出される。坂田は1925年にパリで行われた世界的な国際的抽象絵画展「今日の芸術展」に出品した。その時のスローガンである「絵の中に新たに美を創造する」という発想はそもそも知の美術の始まりであった。

しかし絵のテーマとしてこうした物理科学的な事象が選ばれたことはほとんどない。自然現象、物理現象によってできる軌跡のようなものは法則性に基づくものであり無駄がなく美しい。宇宙もそうだがミクロの世界も同様だ。さらにこの絵を見ると私なりに様々のことが想像できる。これらの曲線は、かつて宗達が描いた「風神雷神」の絵にみられる自由な曲線やらハンス・ハルツングの抽象画の切れのよい曲線を想起させられる。(ちなみに丸田さんは「風神雷神」という絵を描いている。また平松輝子も「風神雷神」の絵を描いている。)それらは平面的なものであったが、丸田さんの曲線は3Dのように立体感に満ちている。立体という意味ではかつてのキュビズムもまさに立体派そのものであった。そういう意味で100年ぶりの新しいキュビズムなのかもしれない。

また丸田さんの絵の背景は白が多いが、それはやはりかつての日本美術を思い起こさせる。丸田さんの絵には様々の要素があるものの総体としてそれは丸田さん独自のものだ。こうした知の画家の多くはダイナミズムに欠ける傾向がある。しかしこれらの絵の前に立つ人は、その画力で納得させられてしまう。いずれにしろ、これほど圧倒的な画面は世界のアートシーンを見てもなかなか見ることはできない。


■平松輝子展   平松朝彦

今回パノラマ画像は省略したが1階で開催したのは「銀河展」である。墨と和紙による作品群であるから基本的に色は黒と白である。しかし平松の絵の特徴は、無限ともいえる中間のグレーである。写真では階調(エチュード)ともいうが通常の絵の具による絵画との圧倒的な相違点といえる。そういう意味で東洋の墨はアナログであるが西洋の絵画はデジタルなのである。技法的に解説すれば、墨は和紙を染めるからであり、絵の具を画面の上に置くからではない。絵の具で同様のことをしようとすれば透明性のある絵の具を何層にも塗り重ねることによって可能となるかもしれないが大変なことだ。

また墨は、「染める」と同時に「染めない」こともできる。それはろう染の手法としても知られているが、西洋画ではできない。一見単純な墨の絵だが、技法的には複雑であり西洋絵画を凌ぐ。そしてその技法ゆえに可能となったのが平松の絵である。この高度な技法なくしてはできない銀河の世界の絵である。

今回描かれた天変、天体崩落、星雲、銀河など絵の対象は一見自然現象であり厳密な抽象とはいえない。しかし描かれた絵は、そのイメージであり、物の関係を描き何かを明らかにしようとする意味で抽象絵画だ。さらにそれだけではなく、その絵のメッセージは我々にたいする一つの警告なのである。


■丸田恭子経歴

薬科大学卒業後82年渡米、アートステューデントリーグオフニューヨークにて学ぶ。

主な出品展は、ギャラリーαM(東京)、VOCA展(上野の森美術館)、線について(板橋区立美術館)、日本絵画の展望展、(東京ステーションギャラリー)、彼女達が創る理由(長野県信濃美術館)、アートウオッチング(宮城県美術館)、信州からあつい風(関口美術館)上海アートフェアなどグループ展、個展多数。駒ヶ根高原美術館賞受賞。2007年〜8年信濃毎日新聞「風土と哲学」に絵を掲載。
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